SFTSとは?獣医師が直面する新たな感染リスクと隔離の重要性
SFTSとは?獣医師が直面する新たな感染リスク
SFTSウイルスの医師感染例
2025年6月、三重県の動物病院でSFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染が疑われた猫を診察していた獣医師が発症し、残念ながら死亡しました。
初期症状は発熱・倦怠感で始まり、急速に多臓器不全へ進行。その後の調査で、猫由来の体液への接触が感染源と考えられています。
日本獣医師会はこれを受けて、動物病院における感染対策の徹底を全国に呼びかけました。
![]() |
SFTSウイルスの特徴と致死率
SFTSウイルス(Bandavirus dabieense)は、主にマダニが媒介する一本鎖RNAウイルスです。
人への致死率は10~30%、猫では60%に達する症例も報告されています。
日本や中国、韓国など東アジアで多く確認され、現時点で特効薬やワクチンの承認はなく、感染予防が不可欠です。
猫から人への感染事例と背景
猫がSFTSVに感染し、人に二次感染したとされる事例は日本国内で複数報告されており、特に唾液や血液との接触で感染した可能性が高いとされています。
感染ルートが多様であるため、診療現場では常に高い警戒が求められています。
![]() |
動物病院における感染リスクの現状
2021年の国内調査では、動物病院スタッフのSFTSV抗体保有率は2.2%と健康な一般人(0%)より高く、職業的な曝露リスクが明らかになっています。
また院内感染例も報告されており、教育と環境整備の強化が急務とされています。
猫の診療で感染を防ぐための基本対策
マダニ予防と野外活動の制限
SFTSVの第一感染経路はマダニですが、猫が屋外でマダニに噛まれるとウイルス保持者となります。
定期的なマダニ駆除薬や室内飼育、散歩ルートの管理が有効です。
疑い症例におけるトリアージ手順
発熱・出血・血小板減少などSFTSを疑う症状を示す猫は優先隔離。
問診で屋外接触歴を精査し、診察室への導線を明確化します。検査依頼前に適切に隔離設備を活用することが必要です。
感染防御のための個人防護具(PPE)
診察・処置時は以下を必ず装着しましょう:
– ニトリル手袋
– 防水ガウンまたはエプロン
– N95相当マスク
– フェイスシールドまたはゴーグル
これにより飛沫・体液飛散からの防護を最大化できます。
陰圧室(簡易陰圧ゲート)とは?仕組みと必要性
陰圧環境の定義と基本構造
陰圧とは、室内の気圧を室外より低く保ち、空気を常に室内へ流入させる状態を指します。
HEPAフィルターとファンを組み合わせ、粒子状のウイルスや微生物を捕捉します。
陰圧室は人間でもコロナウイルスが流行した際に、簡易陰圧室が多く普及しましたが、同じ様式です。
空気の流れを制御する陰圧の原理
専用ファンが空気を吸引し、HEPAフィルターを経由して排気。
室内から汚染空気が漏れ出るのを防ぎ、ドア開閉時の飛沫拡散も抑えます。
陰圧ゲートの活用で交差感染を防ぐ仕組み
簡易陰圧ゲートは、既存の診察室入口に設置可能で、新たな建設工事不要。
内外で圧力差を維持することにより、猫が発する飛沫やエアロゾルを閉じ込め、他の部屋への拡散を防ぎます。
簡易陰圧ゲートの正しい使い方と導入手順
設置スペースと電源・排気の準備
設置には、入口周辺に1~2mのスペースと電源コンセント、排気用ダクトの取り回し場所(天井や窓経由)が必要。
工事不要で短期間でセットアップが可能です。
使用時のプロトコル(入退室・防護服着脱)
1. 入室前:PPE:個人用防護具(Personal Protective Equipment)を装着
2. 診察中:猫はゲート内で処置し、器具・注射等を最小限にまとめる
3. 除衣:ゲート内でPPEを使い捨てし、汚染物と共に隔離
4. 退出後:ファンによる陰圧は数分間継続し、空気を清浄化
導入後のメンテナンスと長期活用のコツ
– HEPAフィルター交換:推奨は半年~1年に1回(使用頻度により短縮)
– 部品点検:ファンの音・排気性能の定期確認
– スタッフ教育:操作マニュアルと定期研修を実施、チェックリスト運用
– 導入事例活用:他感染症にも活用可能
SFTSに関するよくある質問(FAQ)
陰圧ゲートは小規模動物病院でも使える?
はい、簡易設計で工事不要、短期導入も可能です。
少人数体制の小規模施設でも院内感染防止に非常に有効です。
動物用エアー式簡易陰圧室は2部屋もしくは3部屋あるタイプもあり、安全に治療や検査を行うことが出来ます。
![]() |
完全防護でどこまで感染リスクを下げられる?
PPE+陰圧ゲート+適切な清掃消毒体制により、ウイルス飛沫・エアロゾルによる感染リスクをほぼゼロに近づけられます。
感染対策の多重構造が重要です。
感染が疑われた場合の報告・検査体制は?
SFTSは感染症法上、獣医師による行政(保健所)への報告義務があります。
検査は検疫所・公立衛生研究所・獣医師会検査体制と連携し、迅速対応が求められます。
まとめ|SFTS対策は「備え」が命を守る
感染症対策の再確認
マダニ予防、トリアージ、PPEの徹底はすべての動物病院の基本です。
陰圧ゲート導入のメリットと支援策
工事不要で安全性が高く、他の感染症にも応用できる設備として注目されています。
製品比較や導入支援も積極的に利用しましょう。
自院を守るため今すぐできる一歩
診療フローと設備を見直し、今すぐ行動を。
陰圧ゲートの導入検討やスタッフ教育を始め、SFTSから自院・スタッフ・飼い主を守りましょう。
関連商品
関連コラム記事
-
-
SFTSとは?獣医師が直面する新たな感染リスクと隔離の重要性
SFTSとは?獣医師が直面する新たな感染リスク SFTSウイルスの医師感染例 2025年6月、三重県の動物病院でSFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染が疑われた猫を診察していた獣医師が発症し、残念ながら死亡しました。 […] -
-
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)について②】SFTSの感染例と対策について
前回に引き続き、SFTSについてです。 SFTSは2011年に中国の研究者らによってダニ媒介感染症であることが発表され、2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患したと初めての報告がされました […] -
-
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)について③】2021年の発生事例と発生時期について
SFTSについて、3回目の投稿ですが、今年に入ってからの事例を少し紹介します。 5/13の熊本県感染症情報で、SFTSの感染者が1名、ツツガムシ病の感染者が発表されました。 &n […] -
-
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)について④】夏のアウトドア マダニに注意。効果のある予防法は?
以前からマダニに噛まれることによって感染する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)」について、情報を出してきました。 弊社の関東支店がある千葉県でもSFTSの初めての感染例が出たという […] -
-
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)について⑧】新聞記事
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)について⑦】宮崎大学がSFTS隔離用シェルターを作製へ。 SFTSはマダニによって広がるウイルスの病気で、人獣共通感染症です。 宮崎では多くの感染者が報告されており、宮崎県の […] -
-
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)について⑦】宮崎大学がSFTS隔離用シェルターを作製へ。
宮崎大学の金子泰之准教授がプロジェクト実行者となり、ネコ用簡易隔離シェルターの作製に取り組まれようとしています。 詳しくは、クラウドファウンディングのページをご覧ください。 SF […]