SFTSとは?獣医師が直面する新たな感染リスクと隔離の重要性

2025.07.01

SFTSとは?獣医師が直面する新たな感染リスク

SFTSウイルスの医師感染例

2025年6月、三重県の動物病院でSFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染が疑われた猫を診察していた獣医師が発症し、残念ながら死亡しました。

初期症状は発熱・倦怠感で始まり、急速に多臓器不全へ進行。その後の調査で、猫由来の体液への接触が感染源と考えられています。

日本獣医師会はこれを受けて、動物病院における感染対策の徹底を全国に呼びかけました。

 

SFTSウイルスの特徴と致死率

SFTSウイルス(Bandavirus dabieense)は、主にマダニが媒介する一本鎖RNAウイルスです。

人への致死率は10~30%、猫では60%に達する症例も報告されています。

日本や中国、韓国など東アジアで多く確認され、現時点で特効薬やワクチンの承認はなく、感染予防が不可欠です。

 

猫から人への感染事例と背景

猫がSFTSVに感染し、人に二次感染したとされる事例は日本国内で複数報告されており、特に唾液や血液との接触で感染した可能性が高いとされています。

感染ルートが多様であるため、診療現場では常に高い警戒が求められています。

 

動物病院における感染リスクの現状

2021年の国内調査では、動物病院スタッフのSFTSV抗体保有率は2.2%と健康な一般人(0%)より高く、職業的な曝露リスクが明らかになっています。

また院内感染例も報告されており、教育と環境整備の強化が急務とされています。

 

猫の診療で感染を防ぐための基本対策

マダニ予防と野外活動の制限

SFTSVの第一感染経路はマダニですが、猫が屋外でマダニに噛まれるとウイルス保持者となります。

定期的なマダニ駆除薬や室内飼育、散歩ルートの管理が有効です。

 

疑い症例におけるトリアージ手順

発熱・出血・血小板減少などSFTSを疑う症状を示す猫は優先隔離。

問診で屋外接触歴を精査し、診察室への導線を明確化します。検査依頼前に適切に隔離設備を活用することが必要です。

 

感染防御のための個人防護具(PPE)

診察・処置時は以下を必ず装着しましょう:

– ニトリル手袋

– 防水ガウンまたはエプロン

– N95相当マスク

– フェイスシールドまたはゴーグル

これにより飛沫・体液飛散からの防護を最大化できます。

 

陰圧室(簡易陰圧ゲート)とは?仕組みと必要性

陰圧環境の定義と基本構造

陰圧とは、室内の気圧を室外より低く保ち、空気を常に室内へ流入させる状態を指します。

HEPAフィルターとファンを組み合わせ、粒子状のウイルスや微生物を捕捉します。

陰圧室は人間でもコロナウイルスが流行した際に、簡易陰圧室が多く普及しましたが、同じ様式です。

 

空気の流れを制御する陰圧の原理

専用ファンが空気を吸引し、HEPAフィルターを経由して排気。

室内から汚染空気が漏れ出るのを防ぎ、ドア開閉時の飛沫拡散も抑えます。

 

陰圧ゲートの活用で交差感染を防ぐ仕組み

簡易陰圧ゲートは、既存の診察室入口に設置可能で、新たな建設工事不要。

内外で圧力差を維持することにより、猫が発する飛沫やエアロゾルを閉じ込め、他の部屋への拡散を防ぎます。

 

簡易陰圧ゲートの正しい使い方と導入手順

設置スペースと電源・排気の準備

設置には、入口周辺に1~2mのスペースと電源コンセント、排気用ダクトの取り回し場所(天井や窓経由)が必要。

工事不要で短期間でセットアップが可能です。

 

使用時のプロトコル(入退室・防護服着脱)

1. 入室前:PPE:個人用防護具(Personal Protective Equipment)を装着

2. 診察中:猫はゲート内で処置し、器具・注射等を最小限にまとめる

3. 除衣:ゲート内でPPEを使い捨てし、汚染物と共に隔離

4. 退出後:ファンによる陰圧は数分間継続し、空気を清浄化

 

導入後のメンテナンスと長期活用のコツ

– HEPAフィルター交換:推奨は半年~1年に1回(使用頻度により短縮)

– 部品点検:ファンの音・排気性能の定期確認

– スタッフ教育:操作マニュアルと定期研修を実施、チェックリスト運用

– 導入事例活用:他感染症にも活用可能

 

SFTSに関するよくある質問(FAQ)

陰圧ゲートは小規模動物病院でも使える?

はい、簡易設計で工事不要、短期導入も可能です。

少人数体制の小規模施設でも院内感染防止に非常に有効です。

動物用エアー式簡易陰圧室は2部屋もしくは3部屋あるタイプもあり、安全に治療や検査を行うことが出来ます。

 

完全防護でどこまで感染リスクを下げられる?

PPE+陰圧ゲート+適切な清掃消毒体制により、ウイルス飛沫・エアロゾルによる感染リスクをほぼゼロに近づけられます。

感染対策の多重構造が重要です。

 

感染が疑われた場合の報告・検査体制は?

SFTSは感染症法上、獣医師による行政(保健所)への報告義務があります。

検査は検疫所・公立衛生研究所・獣医師会検査体制と連携し、迅速対応が求められます。

 

まとめ|SFTS対策は「備え」が命を守る

感染症対策の再確認

マダニ予防、トリアージ、PPEの徹底はすべての動物病院の基本です。

 

陰圧ゲート導入のメリットと支援策

工事不要で安全性が高く、他の感染症にも応用できる設備として注目されています。

製品比較や導入支援も積極的に利用しましょう。

 

自院を守るため今すぐできる一歩

診療フローと設備を見直し、今すぐ行動を。

陰圧ゲートの導入検討やスタッフ教育を始め、SFTSから自院・スタッフ・飼い主を守りましょう。

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