森林火災に備える「水利」対策とは
森林火災が増える今、水利への意識が高まる理由
気候変動による山林火災の増加
近年、気候変動の影響により、全国的に山林火災のリスクが高まっています。
長期的な高温や降水量の減少、そして乾燥した気候が続く中、山間部を中心に火災が多発。
かつては数年に一度しかなかった山火事が、今では毎年のように報告されるようになりました。
山林火災の恐ろしさは、その広がりやすさと鎮火の難しさにあります。
道路が限られる山間部では消防車が現場に近づけないことも多く、火勢が強まる前に初期対応するための体制強化が求められています。
消防活動における「水利」とは
消防における「水利(すいり)」とは、消火活動で使用される水源や水施設を指す言葉で、「消防水利」とも呼ばれます。
消防法では、消防活動に必要な水源の整備を義務付けており、消火栓や防火水槽、河川、ため池などが指定水利として扱われます。
また、指定された水利が現場近くにない場合には、仮設タンクや搬送水などを用いる代替水利の活用も検討されます。
近年では「消防水利設置基準」に基づいた整備が進められており、特に山間部における水利の確保が重要なテーマとなっています。
山間部での水源確保の難しさと対応課題
自然水源に依存できない山中の現実
山林火災が発生しやすい地域の多くは、水源が近くにないことが多く、河川や池があっても距離が遠かったり、渇水や凍結のリスクがあったりと、常に水利として活用できるとは限りません。
また、標高の高い地域では給水車の通行すら難しくなることもあり、水利の不在が初期消火の大きな障壁となっています。
水源までの搬送や連携の負荷
遠方の水源からの給水には、中継ポンプ車や中継ホースの設置が必要となり、多大な人員と時間を要します。
消防本部だけでなく、地元の消防団や自主防災組織も連携して対応する必要がありますが、訓練の頻度や人材の確保など課題も山積しています。
そのため、「必要な場所に、すぐに使える水を確保する」ことが、今後の消防戦略の鍵を握っています。
消防用貯水槽の活用が注目される理由
中継槽として機動的な活用が可能に
山間部など水源が限られる地域で注目されているのが、「消防用貯水槽」を中継槽として活用するという方法です。
これは、現場近くに一時的な水の拠点を設けることで、消防車から現場への放水中継を円滑に行う仕組みです。
特に近年では、パイプ式や仮設タイプの貯水槽が登場し、現場に応じた柔軟な運用が可能となっています。
10トン~20トン規模の水をためておける製品が多く、分解して軽トラック等で運搬できるため、山中などアクセスが限られる地域にも対応可能です。
中継運用による迅速な消火支援
中継槽の設置によって、水源から火点までの搬送負荷が軽減され、消防ポンプ車によるリレー送水の拠点として非常に有効です。
道路事情が悪く給水車が進入できないような場所でも、山中に一時的な「水の基地」をつくることで、初動対応力を大きく向上させることができます。
また、構造がシンプルな仮設タンクは消防団などの地域単位でも設営でき、災害発生時の即時運用が可能です。
山林火災のように燃え広がるリスクが高い現場において、迅速な対応と水利の確保が同時に実現できるのが大きな利点です。
消防水利設置基準と製品紹介
消防水利設置基準を満たすには
消防用貯水槽を消防水利として正式に活用するためには、「消防水利設置基準」に則った設計と配置が求められます。
具体的には以下のような条件が重要となります。
・消防車が近接、接続できる場所に設置されていること
・10トン以上の貯水容量が確保されていること
・設置・撤去・管理が安全かつ迅速に行える構造であること
仮設型であっても、火災現場で実際に給水拠点として機能するためには、これらの基準を満たす製品を選定することが不可欠です。
また、地域の消防本部や自治体との事前協議も円滑な導入に向けて重要なプロセスとなります。
消防用スピード貯水タンクのご紹介
ここでは、山間部や臨時水利として注目されている「消防用スピード貯水タンク」をご紹介します。
・容量:4,000L もしくは 6,000L
・サイズ:展開時 3m × 3m、高さ 1m~1.5m
・設営時間:約15分
・材質:PVC(ポリ塩化ビニル)
・特徴:工具不要で送風機だけで設営可能。高い可搬性と使用しない際は収納性を兼ね備えた設計。
消防局や消防団方からの評価も高く、「必要なときに、必要な場所へ設置できる」と好評をいただいています。
現場の状況や使用目的に応じて、容量やサイズを変更したカスタマイズも可能です。
実際のデモの様子
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2025年6月 都市部でのデモの様子
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山林火災対策に不可欠な「水利」の再構築を
気候変動が進む中で、山林火災への備えはこれまで以上に重要性を増しています。
特に水源の少ない山間部では、仮設も含めた「消防水利」の再構築が不可欠です。
消防用貯水槽は、限られた人員でも運用可能で、機動力と実用性を兼ね備えた水利対策として注目されています。
山林火災に強い地域づくりのために、今こそ貯水槽の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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