消防による中継訓練・放水訓練の重要性とその方法

「火災現場が水利から遠い…」「新人団員に、筒先操作の本当の危険性と重要性をどう教えるべきか…」

消防団や消防本部の訓練において、こうした課題に直面することはないでしょうか。

災害現場での消火活動は、一分一秒を争います。

その成否を分けるのが、いかなる状況でも確実に火点まで水を送り届ける「中継送水」と、安全かつ効果的に注水する「放水」の技術です。

本記事では、消防活動の根幹ともいえる中継訓練と放水訓練に焦点を当て、その重要性から具体的な手順、安全管理のポイント、そして訓練効果を最大化するコツまでを網羅的に解説します。

この記事を参考に、形骸化しない「生きた訓練」を計画し、組織全体の現場対応力を向上させましょう。

 

消防訓練の基礎と意義

消防訓練の目的と意義

消防訓練の目的は大きく三つに分けられます。

第一に、消火活動を迅速かつ的確に行い被害を最小限に抑えること。

第二に、団員の連携行動を統一し、安全を確保すること。

第三に、地域住民に安心感を与え、防災意識を高めることです。

これらの目的を達成するため、消火訓練や避難訓練、防災訓練などさまざまな種類の訓練が実施されます。

 

消防法・消防組織法における位置づけ

消防訓練は消防法などに基づき実施が求められています。

例えば、学校や病院などの防火対象物では、年に数回以上の訓練が義務づけられています。

一方で、消防団の訓練は、消防組織法や各市町村の条例に基づき、地域防災力の中核を担う極めて重要な活動として位置づけられています。

火災時に地域住民の命と財産を守るためには、形式的な訓練ではなく、常に実効性を重視した内容が必要です。

消防訓練の内容は「何をするか」が明確でなければなりません。

避難経路の確認だけでなく、初期消火の体験や資機材の取り扱い習熟も含まれます。

 

中継訓練とは:水利の不利を克服する

火災現場が水利(消火栓、防火水槽、河川など)から離れている場合、複数の消防ポンプを中継し、ホースを延長して水を送り続ける必要があります。

これを実践的に確認するのが中継訓練です。

消防団活動において中継訓練は欠かせないものであり、特に山間部や林野、住宅密集地域など、水利が少ない、あるいは消防車が進入しにくい場所では火災対応の要となります。

 

中継訓練の具体的な手順とポイント

中継訓練では、まず水利から水を汲み上げ、ホースを延長して現場へ送水します。距離が長い場合は途中に中継ポンプを設置し、圧力を保ちながら水を送り続けます。

訓練では、以下の点が重要なポイントとなり、全部署のスムーズな連携が求められます。

・情報伝達: 水利部署、中継部署、火点部署間の確実な情報伝達(無線、手信号など)

・ポンプ配置: 地形の高低差を考慮した中継ポンプの適切な配置

・圧力設定: 送水圧と受水圧の連携(過剰な圧によるホース破断や、圧力不足による放水不能を防ぐ)

・ホース延長: 迅速かつねじれ(キンク)のないホース延長

 

中継訓練の効果

中継訓練を繰り返すことで、長距離送水への対応力が高まり、災害現場での混乱を減らせます。

新人団員にとってはホースの扱いや送水圧を体感できる貴重な場となり、ベテラン団員にとっても各部署の役割を再確認し、指揮能力を磨く機会になります。

また、自治体による公開訓練として実施することで、住民への防災啓発にもつながります。

 

放水訓練の目的:安全確実な注水技術の習得

放水訓練は、実際に水を放出しながら消防車やホースの操作を確認する訓練です。

放水圧・放水量・放水距離を理解し、団員同士が連携して安全に消火活動を行うことを目的としています。

特に、放水時の筒先の反動力は想像以上に大きく、体験的に学ぶことが事故防止の観点から非常に重要です。

 

放水訓練の方法

消防車を使った放水では、最大放水距離や放水量を確認します。

小規模な消防団の場合でも、ホースを接続して実際に水を流し、筒先員の姿勢や補助者との連携、放水の安定性を確かめることが有効です。

消防署による放水試験とは異なり、消防団の放水訓練は「団員が安全に操作できるか」「役割分担が機能しているか」を確認する点に重点があります。

 

放水訓練の課題と注意点

放水訓練では、周囲への水しぶきや騒音への配慮が必要です。

また、ホースの暴れによる事故防止のため、以下の点を徹底し、チームで対応することが欠かせません。

・確実な保持: 筒先員は脇を締め、腰を落としてしっかりと筒先を保持する。必ず補助者を付ける。

・合図の徹底: 「放水はじめ!」「放水やめ!」などの合図を機関員(ポンプ操作員)と復唱・確認する。

・ホースの整理: 送水前にホースのねじれ(キンク)がないか確認する。

訓練後には機材の点検・整備を行い、次回に備えることも重要です。

 

効果的な消防訓練を行うために

消防訓練の成果を高めるためには、専用の訓練施設や設備を活用することが有効です。

例えば仮設の給水タンクやエアー式の折りたたみ式貯水タンクを活用すれば、水利が乏しい地域でも中継・放水訓練を安全に実施できます。

こうした設備は近年、自治体や消防団で導入が進んでおり、訓練の質を大きく高めています。

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さらに、団長や指導者は訓練の計画から実施、振り返りまでを体系的に行う役割を担います。

特に新人団員には、基礎的なホース操作や放水姿勢を丁寧に指導し、実戦で安全に動けるように育成することが求められます。

訓練後には反省会(デブリーフィング)を開き、良かった点や課題を全員で共有しましょう。

訓練の成果を記録し、定期的に改善を図るPDCAサイクル(計画→実施→評価→改善)を回すことで、消防団全体の防災力が向上します。

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